スタイリッシュな爽快どんでん返し『ピエロがお前を嘲笑う』【映画Review】

100%騙されるなんて言っちゃあいけないよ

『まさかの結末に<100%見破れない!><騙された!>という観客が続出』

これは現在、上映中のどんでん返し系映画『ピエロがお前を嘲笑う』の宣伝文句なんですが、100%騙されるなんてそんなんあり得ないでしょw

どんだけ挑発的な宣伝コピーだよ。今まで、そんな映画たくさん観てきたわ!「絶対騙される〜」とか、「衝撃のラスト〜」とか、実際マジで衝撃受ける映画なんてほんと少数。またですか。またそういう映画ですか。もう100%は勇気だけで勘弁です。

ほんとにどんでん返しに自信があるなら、こんな煽るような宣伝コピーつけなきゃいいんじゃないかと思うんですよね。今の時代なら、たまたま観に行って「まさか、こんなどんでん返し来るとは思わなかった!やべえ!」って言う感じでtwitterで拡散される時代ですから、あんまりハードル上げずに宣伝したほうがいいじゃないですか。そっちのほうがギャップがあって面白いはずですよ。

『いつもいじわるしてくる男子が、いきなり優しさ魅せつけるとなぜかキュンってなっちゃう』理論知らないんですかね。ギャップは正義ですよ。

まあこういう騙される系の映画なんてパターンが決まっててですね。同じパターンなんだと思いますよ。最後は夢だったとか、主人公が精神疾患持ってたとか、タイムトラベル的な何かだったとか、死んでたやつが生きてた―みたいな感じですよ。はい論破。

じゃあ答え合わせに、観に行ってきます。

ごめんなさい

騙されました…

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驚愕の<マインドファック>ムービー

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まんまと騙されてしまいました。悔しい。これは映画をよく観てる人のほうが騙されるんじゃないかな。

観てる途中に、見抜いたと思ったんですよ。あれっ!こんなわかりやすい伏線で大丈夫?冒頭からどうみても『ユージュアル・◯◯◯◯◯』だし、途中の伏線は『◯◯◯◯クラブ』(ネタバレしちゃうので言いません)と同じじゃん。これわかっちゃったわー。こう思ったんですが、

(1時間後)

うわ〜。そういうことか〜。まんまと引っかかった・・・

こんな状態になりました。

映画は、ある殺人容疑で捕まえられた天才ハッカーベンヤミンが警察に出頭してくるところから物語がスタートします。ハッカー集団である「CLAY」の一員となり、それからサイバー犯罪を犯し、連坊捜査局の盗んだ情報から殺人事件を引き起こすまでの独白というカタチで進んでいきます。

下の予告でも言われていますが、最後に物語の根底を揺るがすようなどんでん返しが待っている「マインドファック・ムービー」というジャンルに位置づけられるドイツの映画です。

▼予告はこちら

電脳世界を電車表現で描く

ストーリーの感想の前に、この映画の特徴的な描写であり、これはカッコイイ!と思えた「電車表現」について。この映画は、ハッカー集団を描く作品なので、もちろんインターネットのやり取りなどを描かなければ話がわからないわけです。

でも、「インターネットって可視化しにくい部分」でもありますよね。言葉で説明してもわかりにくいし、パソコンカタカタの描写見せられても、実際にインターネット上でハッカーがどんな行動をしているのかがわかりにくい。

そんな電脳世界をこの映画では「電車」というカタチで表現しています。例えば、主人公ベンヤミンが、尊敬する天才ハッカー“MRX”に重要なデータを渡すということを伝えるために、電車の中で宝箱のようなものを“MRX”にプレゼントするというような描き方をしているんです。

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▲対峙するベンヤミン(左)とMRX(右)

ここらへんの電脳世界の描き方がなかなかクールなんですよね!

インターネット上での匿名性を仮面で表現したり、ごちゃごちゃしたカオスみたいな雰囲気も出ている。ここらへんはただのどんでん返し系映画とは違ったスタイリッシュさがありました。

伏線が観客を大きなミスリードへと招く

そして重要なストーリーのほうなんですが、観客が謎を解こうとすればするほど「騙される」ように仕掛けられているのがこの映画のスゴイところです!

映画を観ていると、これまでミステリー/サスペンス映画として傑作と言われていた作品のオマージュとなっている伏線がたくさんあるんですよね。

例えば、同じシルエットの2人が並んでいる絵が途中登場するんですが、それなんて「えっ!まさかオチってそういうことなの?」あの有名な作品と同じじゃん、と思わずにはいられない(意味分からなかったら、そのままで大丈夫です。劇場で確かめましょう)。

また、最初に刑事への自供から始めるという物語展開は「ユージュアル・サスペクツ」を想起させることで、この物語が何かしらの「嘘」によって出来上がっていると観客に思わせる。

そんな伏線が、観客の物語に対する「疑いスイッチ」を押し、「たぶんこうだろうな〜」と思わせ、そんな観客の予想を最後にもう一回覆していく。

この二重三重の仕掛けはほんと見事です。100%騙されるってふれこみは間違っていなかった。


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ちょっとだけ残念なところ…(注:ぎりぎりネタバレ)

『ピエロがお前を嘲笑う』は、どんでん返し系映画としてはとても良くできていて多くの人がそのトリックのミスリードに騙されてしまいます。でも、終わった後ちょっとだけ物足りなさを感じてしまいました。

その「物足りなさ」の理由は、最終的にこの映画「めっちゃスッキリしちゃう」からだと思うんですね。確かに、宣伝コピー通りぼくは騙されました。でも、最後のオチの部分では、ちゃんとどんな騙しのテクニックだったのか、それを懇切丁寧に謎解きしてくれる。それはもうコナンにプシュって麻酔かけられた後の毛利小五郎なみに丁寧に説明してくれます。だから、最後すごーくスッキリしちゃうんですね。まるで、手品師がマジックのタネをきちんと説明してくれるような感じ。

いや、これの何がいけないとかではないんですが、少なくともどんでん返し系映画の傑作と言われる映画って、こんな丁寧ではなく、観客に頭をフル回転させて「あれっ!あれれれって!」って感じな状態のままギロチンが落とされたかのように「ドンっ!」てクレジットに行くような映画なんですよ。つまり、謎を残し、物語に余白を残すような映画です。

だけれど『ピエロがお前を嘲笑う』はちょっとそれがなかったんですよね。伏線自体も「これ伏線ですよーちゃんと覚えててくださいね!」みたいにわかりやすい設計で、さいごも綺麗に伏線シーンを見せて全部回収してくれる。結局、余白ゼロ

全体的にスタイリッシュで、場面運び、トリック自体も面白かったので、この部分だけもう少しこだわってほしかったなー、なんて。

まあ、とは言ってもこれはどんでん返し映画好きには、楽しく観ることができる作品です。期待を裏切らず騙してくれることは保証できます。

【おまけ】主人公ベンヤミンが尊敬するハッカー”MRX”の提唱する三原則

最後に、覚えておきたい言葉やなんか気になった言葉を紹介。グッときた言葉。

主人公ベンヤミンが尊敬する天才ハッカー“MRX”の3原則。

“MRX”の提唱する三原則

  1. すべてのシステムには穴がある
  2. 不可能に挑戦しろ
  3. 現実世界を楽しめ

劇中では、この三原則はとても重要で、「不可能に挑戦しろ」という言葉を胸に主人公やCLAYメンバーが奮起したり、「システムには穴がある」という原則のもと人間を騙していきます。システムの穴は「常に人間である」という考えがカギになってくる部分でもある。やっぱり人間ってとても脆いシステムだなーと教訓にる言葉でした。

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