全編140分ワンカット『ヴィクトリア』の没入感はバードマン超えだった【映画Review】

▲「ヴィクトリア 公式サイト」より

こんにちは。久しぶりのブログ更新です。

社会人になって1ヶ月半くらいなんですが、やっぱり仕事しながらブログ書くってけっこうハードですよね。ほんと社会人ブロガーって凄いってことを実感する日々です。とは言え、このままブログを自然消滅させるのも勿体無いので、このまま細々書いていきます。

さて、今回の映画Reviewはベルリン国際映画祭で3冠を達成し、「全編140分ワンカットの衝撃」の触れ込みの『ヴィクトリア』を観に行きました!

映画館は渋谷の「シアターイメージフォーラム」。単館系の映画館なので、味のあるオシャレな感じなシアターです。

#渋谷 #シアターイメージフォーラム #ヴィクトリア

Masatoshi Ouraさん(@masalog_me)が投稿した写真 –

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物語

3か月前にマドリードからベルリンにやって来たばかりのヴィクトリア(ライア・コスタ)。クラブから、帰ろうとしていたところ酔っ払ったゾンゲら4人組の青年に呼び止められる。まだドイツ語もあまり話せないながらも、彼女はその4人組と一緒にお酒を飲み交わす。

しかし、その4人組の中の一人が、裏社会と繋がっており、酔いつぶれた仲間の代わりに犯罪の片棒を担ぐことに……。

編集一切なしの「一本撮り」!

映画のシーン全てを「ワンカット」で繋いだ映画、と聞いて、映画好きならすぐに思い浮かべるのが「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」でしょう。

昔バードマン役としてスターだった過去を持つハリウッド俳優が、20年後再起をかけてブロードウェイ進出を目指すという物語。このバードマンでは、最新鋭の映像技術を使い、カットとカットの間をシームレスに繋ぎ合わせることで、まるでワンカットで撮られているような映像が生み出されました。しかし、この映画はあくまで「擬似的」なワンカットであり、ずっと同じカメラで撮影されているわけじゃありません。

対して、このヴィクトリアは、エンドロールを削って134分間を、擬似的につなげるのではなく、本当に「一本撮り」で仕上げています。つまり、映画の撮影が始まったら、役者の動きや言葉にはひとつもミスは許されず、カメラマンだって途中でトイレに行くこともできないし、役者がベルリンを走り回っているシーンはず〜〜〜っと追いかけている状態です。134分まったく息を切らせません。

しかも、この映画の撮影、スタジオの中ってわけじゃないのがまた凄い。全部「オールロケ」です。

「オールロケ」ということは、撮影環境を制作側でコントロールすることができない状態ということです。途中で通行人が何もわからず撮影に入ってくる可能性や突然うるさいヤンキーが絡んでくる可能性だってある。実際、映画の前半で、ヴィクトリアとゾンゲら4人の若者が路上で酔っ払っているとき、2人の通行人が絡んでくるシーンがあるんですが、マジでふつうの通行人らしいんです。ただ、そこで咄嗟にスキンヘッドのボクサーってやつがけんか腰で彼らを追い払います。これがアドリブってんだから、役者陣もかなりの能力が問われてますよね。

ちなみに撮影では、たった12ページの台本のみで、俳優たちはアドリブをふんだんに入れて演技したそうです。

「ヴィクトリア」のバードマンを超える没入体験

このような一本撮りで取られた「ヴィクトリア」ですが、では、その一本撮りをすることで、どんな体験が生まれたのでしょうか?

昨今、3D映画が当たり前になり、さらに4Dの映画館も増えてきている中、映画館での「映像体験」「没入体験」のレベルは日増しに上がってきています。ただ、それは映画の鑑賞フォーマットが進化しているだけで、その中身が伴っていないと3Dだろうが、4Dだろうが、IMAXだろうがなんだか映画の物語に入り込めない作品は少なくありません。

そんな状況を考えると、全てを一本撮りにするという破天荒な撮影手法で仕上げられた「ヴィクトリア」は、そんな3D,4Dを使わなくても、それと同様、いやそれ以上の没入体験を生み出した稀有な作品ではないでしょうか。

140分間のワンカットを実現することにより、まるでリアル世界で「ヴィクトリア」に起こる“一夜”の出来事を一緒に擬似体験しているかのような感覚をぼくたちに味わわせてくれるんです。実際、ぼく自身、映画の世界に入り込みすぎて、酔った時のような感覚に陥りました。ずっとヴィクトリアの悪夢とも現実ともつかない世界観から戻れず、映画館を出たときまで、ホントにふわふわした足取りになってしまいますよ。

孤独な女性「ヴィクトリア」Let it go的物語

ずっと一本撮りの話ばっかりでしたが、ストーリーの中心であるヴィクトリアという女性の物語も魅力的です!

作中、ヴィクトリアがカフェにあるピアノを弾くシーンがあり、そこで彼女の過去が語られます。16年間、毎日7時間ピアノの練習をし続けたものの、音楽院でその才能の壁に阻まれ、音楽の道から挫折。そこでフラストレーションを感じ、スペインのマドリードからベルリンに一人移ってきた。そこには、何か心の内に打ち破りたい何かがあって、友だちのいないベルリンでは孤独に暮らしている。そんな女性がヴィクトリアです。

だから彼女は、酔っぱらいの青年4人について行ったり、避けられたにも関わらず犯罪に加担しそうな局面で「私もやる!」と言い出したり。

そして、犯罪をやり切ったときなんかはまるでアナ雪のエルサが「Let it go」を歌い出したときのように解放感を爆発させます。アナ雪の「ありのままに」が多くの女性の共感を生んだように、ヴィクトリアもそれと同じ「Let it go」的な物語であり、深い共感を生み出してくれんです。

この映画は、「140分のワンカット」というフレーズが先行してしまいますが、「ああ、私このままじゃいけない!全て忘れて、自分を解放したい!」という現代的な鬱屈とした気分からの解放、というテーマで「ヴィクトリア」を観ても面白いのではないでしょうか。

一応、クライム・サスペンスというジャンルではありますが、普段の自分とは違う「誰か」の物語に没入してみたいという人にとっては、誰しもにオススメできる作品です。カメラマンや役者陣、監督が一丸となって作った140分間の衝撃をぜひ劇場で体験してください。

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