原作モノなのに、全く原作読んでないらしい園子温版『リアル鬼ごっこ』はまさかの現代社会へのエールだった!【映画Review】

(C)2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会

山田悠介作の「リアル鬼ごっこ」を初めて読んだのは、ぼくが中二のときだったように思う。

西暦3000年の独裁国家。その国の王様の苗字が『佐藤』というだけで、王様は「佐藤多すぎ!減らしチャオ♪」という関西人もびっくりのノリの良さを見せつけ、全国の佐藤さんを抹殺するリアルな鬼ごっこが開催される。

この数行のあらすじだけで、どっからどう見ても厨二病爆発な小説なのだけれど、当時ぼくは中二ど真ん中。原作の「リアル鬼ごっこ」を貪り読んだ記憶があります

そこから10数年の時が経ち、その「リアル鬼ごっこ」が鬼才園子温監督で映画化されるというのだから、観に行くしかない・・・と思ったものの、予告編を見て「どうもつまらなさそう」にしか見えず、レビューを見ても評価が低い。「こりゃあ、劇場で観なくてもいいかも」と結局タイミングを逃して、月日が経ってしまった。

そしてようやくDVDレンタルも開始したことで、園子温版「リアル鬼ごっこ」を鑑賞。

▼予告編がこちら

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鑑賞後:劇場で見れば良かった…

ミスった。

劇場で観ておけば良かった。こりゃあ傑作だ。求めていた園子温監督の映画だ!!!!!

園子温の真骨頂「エロ」と「グロ」のカーニバルじゃ!

意味分かんない哲学的な感じも良い!ュールだ。この世はシュールだ!シュールに負けんな!

すいません。

これじゃあ、何を言ってんのかわからないので、これからちゃんと書きます。

冒頭10分で「エログロ」パレード

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(C)2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会

まずこの映画は冒頭10分で、とりあえずなんか「ヤバイ」映画だということがわかります。

主演であるトリンドル玲奈ちゃんは女子高生役。その修学旅行中のバス車内のシーンから物語がスタートします。

こんなグロ映画に出る女子高生ですから、「絶対女子高生じゃねえだろ」って人がまぎれているのはご愛嬌。おそらく20代であろうJKがたくさん乗ったバス車内では、修学旅行中の楽しそうなキャッキャした声に包まれています。

そして、トリンドル玲奈ちゃんはそんな中、手帳にポエムを書いているような静かな女子高生。

バスがそのまま進んでいると、玲奈ちゃんが手帳にのんびりと次の言葉を書こうとしたとき、バス車内が揺れ、ふっと文字を書いていたペンが椅子と隙間に落ちてしまいました。

そして、玲奈ちゃんはゆっくりとそのペンを拾おうとして、しゃがみ込みます。

その瞬間……

ズバーーーーーーーーーーっ!!!!!

えっ!?(・o・)

うええ〜〜〜〜っ!!Σ(゚Д゚)

やばいです。

まだ5分しか経ってません。

えっ!?何が起こったかって?

答えを言いましょう。

玲奈ちゃんがペンを拾おうとしゃがんだとき、バスの上半分がスパっと切れちゃったんです。

んっ?まだよくわかりませんか?

まだイメージできていない人はもう少し想像してみましょう。今、あなたはバスの車内にいます。そして、席と席の間にペンを拾おうとしゃがみ込みました。そして、どこからともなく現れた石川五右衛門がバスの上半分を切ってしまったんです。

上半分というのは、玲奈ちゃんがしゃがんだ時の頭の上から全て。

イメージできましたか?

そうです。このシーン、実際に観るとただの地獄絵図です。

トリンドル玲奈ちゃん以外の、さきほどキャッキャしたJKたちの上半身が見事に真っ二つ!

そして真っ二つにされた人間の断面図がグロいグロい(・o・)

本作は、映画史上一番人間の断面図を映しだした映画と言っても過言ではないでしょう。

この最初のシーンはマジでびっくりしました。ホント唐突すぎて、かなりのグロ描写ですから、いきなり口あんぐりですよ。

(ここまで読んで「うわっ!キモい!無理!」って感じた方のために、かわいい猫の写真載ってけておきます。お口直しにどうぞ。)

By: Moyan Brenn

さて、最初の5分でいきなりこの映画に前のめりならざるを得なかったぼくですが、この作品を撮っているのは数々の「エログロ」映画を撮ってきた園子温。もう1つの「エロ」の部分も忘れてません。

上半分が真っ二つになった恐怖のバスから、トリンドル玲奈ちゃんはそのおぞましさから走り出します。さっきまで笑ってた子たちの上半分がないんですから、そりゃ意味わからず走りだしてもおかしくはありません。そして、その走っている間中、玲奈ちゃんの近くを通りすぎる人が謎のカマイタチによってズッタンバッタン切られていくんです。

ここらへんは、もう気持ち悪いを通り越して、何かの喜劇を見せられているかのような感覚ですね。ほんとスパスパ人が切られていくんですから。

最終的にトリンドル玲奈ちゃんがたどり着いたのが「川」。そこからいきなり「エロ」シーン。川でずぶ濡れ&血まみれになったトリンドル玲奈ちゃんが、近くで死んでいる女子高生の制服に着替えます。

そのシーンがとりあえず監督の趣味としかいいようがない!

トリンドル玲奈ちゃんの下着がモロ見え!

加えて、川の水で顔を洗わせてちょっと谷間を見せようとさせちゃう神演出。

いいのか?いいのかトリンドル!?

もう男なら、このシーンだけで1800円の元を取ったと言えるでしょう。

ここまで、わずか10分です。
めっちゃ濃い…

和気あいあいのJKが、いきなり大量にお亡くなりになって、すぐに、かわいい女の子が下着で着替えているシーンが出てくるんですよ。もうなんかよくわからん感情しか湧かない…

もう監督さすがですって言うしかないです。

映画の最初の10分は、脚本を書く上で「ツカミ」を提示する重要な部分ですが、そこできっちりこれはただの映画じゃない!」と観ている人に思わせてくれる園子温監督はやはり鬼才ですね。

そして、そこから全然「鬼ごっこ」じゃない

冒頭10分がかなりの衝撃で、いったん「これは何の物語なのか?」忘れてしまいそうになるんですが、そう言えばこの映画は「リアル鬼ごっこ」。ここから鬼が出てきて、それにトリンドル玲奈ちゃん含め、まりこさまや真野恵里菜ちゃんが追っかけられるんだろうなぁ、と思うわけです。

でもですね。この映画、全然「鬼ごっこ」じゃないんですよ!

いや、正確に言うと最初にカマイタチみたいな風にトリンドル玲奈ちゃんは追われますよ。追われて、捕まったら何かヤバそうなのはわかる。

そこから、シーンが変わって殺せんせーよろしくの超おっかないマシンガン先生も追っかけてくる。

でも、原作では明確だったはずの「鬼」が一体何なのかがわからない。なぜ、JKたちが追っかけられているのか?追っかけてくるものは一体何なのか?

とりあえずJKが「何か」から逃げ惑う。そんな感じで物語は進んでいきます。

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(C)2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会

ではこの映画は一体どんな物語なんでしょうか?

巷では映画を最後まで観ても「ナニコレイミワカンナイ」という声が溢れています。

でも、最初にぼくは言いました。「これは傑作だ!」と。

ここからはその述べた理由を書きたいと思います。

シュールな世界観を構築した園子温ワールド

「人生はいつだってシュールだ。シュールに負けるな!!」

この言葉は、映画の前半部分に出現する「シュール」という名前の女子高生のセリフです。

シュールは前後関係からして、すごく突飛な感じでこのセリフを言い出すのですが、この言葉は映画を紐解く上でとても重要な言葉です。おそらくこの哲学的なセリフが好きか嫌いかが『リアル鬼ごっこ』を傑作と思えるか、ただの胸糞悪いクソ映画と思うかの分岐点になるんじゃないかと思います。

「シュール」というのは、あんまり正確な意味を答えられない人が多いと思うので、辞書で調べてみると「超現実的な、不条理な、奇抜な、難解な様子」ということを表します。例えば、「シュールなギャグ」という言葉がありますが、ざっくり言うと「高度すぎて難解なギャグ」ということになりますね。

では実際、この映画における「シュール」とは一体何を言っているのでしょうか?

この作品を表現するシュールの一番ピッタシな日本語訳は「不条理」という言葉でしょう。トリンドル玲奈の乗るバスが何の理由もなく不条理に真っ二つになり、なぜ襲ってくるかわからない人たちに不条理に殺されかける。そんな「不条理さ」というものがこの映画が一貫して伝えてくるものなんです。

そうしてみると、実は原作とは全く違った物語になっているにもかかわらず、原作にも漂っていた理不尽な理由で「佐藤姓」の人が殺されてしまう、という「不条理さ」をきちんと受け継いでいるとも言えます。

実際のぼくらの暮らすリアルな社会でも「不条理=シュール」なことはたくさんあります。理由もなく暴言を浴びる人もいれば、理由もなくただただ傷つけられる人もいる。

そこにあって、この映画はそんなシュールに「負けるな」と女子高生が必死に走る姿で表現しているのです。現代社会にうごめくシュール、すなわち不条理に負けるんじゃない。この物語はそんな現代社会へ暮らすぼくらへのエールでもあると思うんです。

そんな社会的なメッセージを、得意の「エロ」と「グロ」を混じえ見事な表現で観た人に衝撃を与える。それこそがこの作品を「傑作」と述べる理由です。

さて、今回のレビューはわちゃわちゃして、最後ちょっとぼくの言っていることまでシュール(「難解な」)な感じになっちゃいましたが、とりあえず『リアル鬼ごっこ』は”観るべき”映画だと思いますよ。

まだ観てない人は、1回観てからこのブログに戻ってきてくると嬉しいです。何となく言わんとしてることわかってくれるはず!

ちなみに、園子温版以外も『リアル鬼ごっこ』の映画版がたくさん出ているんですが、そちらは全然オススメしないので、注意しましょう。

それでは!

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